IT革命の哲学

梅田さんが、「二〇二五年までの半世紀を代表する思想・哲学はどこに」として、思想・哲学について書いておられる。
IT革命という時代の大変革期において、それに相応しい哲学なり思想なりが出てくるのではないかという予感みたいなものを感じられているのだと思われるが、残念ながら「神の下の平等」や「自由、平等」、「主権在民」といった、これまでの革命において出てきたような分かりやすいキャッチフレーズは、まだ無いようである。

個人的には、情報というものに関しての最も優れた言及は、ソクラテスの「人は悪と知りつつ悪を行なうことは無い」であると思っている。
また、「人は悪と知りつつ悪を行なうことは無い」を真とすると、対偶として「人は善と知りつつ善を行なわないことは無い」とも言えるわけで、つまり、「儲かると分かっているのにやらない経営者はいない」とか、「絶対に失敗すると分かっているのに、やってしまう経営者はいるはずがない」とも言えるわけだ。(若干?)

ソクラテスの時代から大切なのは「正しく知ること」であり、知るための道具が情報であり、さらに情報のための技術がIT技術なのであるが、現在のWeb2.0的世界では、情報そのものの技術的な分析や対応も進んでおり(その代表がGoogleはてな)、IT技術により、いよいよ、何が悪であり、何が善であるのかを正しく知ることができるような時代がやってくるのかもしれない。

人類として、様々な物事の善悪を、膨大な過去の事例や非常に多人数の英知を結集し活用するような技術が開発され、予め知ることができるような時代が達成されたとき、初めてIT革命は達成されたと言えるのかもしれない。

もっとも、ソクラテスは「無知の知」とも言っているので、突き詰めるとこの世界では本当に何が正しいのかは、結局よく分からないのかも知れない。

つづく